2007年12月30日日曜日

繭から作る絹の糸


液状絹(えきじょうきぬ)

繭を作る時期に近づくと、蚕は体内の絹糸腺という器官に液状絹を蓄えます。
液状絹は20~30%の濃度の絹フィブロイン溶液です。
蚕の体内から液状絹を取り出し、水で希釈して絹フィブロイン水溶液を調製することも可能です。

2007年12月28日金曜日

絹を溶かしてフィルムをつくる方法 その7



絹フィブロイン水溶液50mlに50%グリセリンを1ml加えた液を調製します。
(絹フィブロイン水溶液の濃度は重量%で6~7%です。)
この液を水平にしたプラスチック板の上に展開します。
20cm×30cmの長方形になるようにガラス棒を使い液を広げていきます。









約24時間で溶媒の水が蒸発し、シルクのフィルムが得られます。
                                                      


できあがったシルクフィルム。



半分はがした状態。



折り曲げた状態。グリセリンを含んでいるので柔軟です。
グリセリンのかわりに、ベタインやポリエチレングリコールを柔軟剤兼保湿剤として加えフィルムをつくることもあります。。
何も加えず絹フィブロイン水溶液だけでもフィルムはつくれます。この場合、水溶性のフィルムがつくれます。
このフィルムを水に溶けないようにするには、アルコール処理などの不溶化処理が必要です。
グリセリン、ベタインなどを添加してフィルムをつくると、1工程で水に不溶性で柔軟性のあるシルクフィルムを作ることが出来ます。

2007年12月27日木曜日

絹を溶かしてフィルムをつくる方法 その6















 セルロースチューブは半透膜のため、高分子量の絹フィブロインはチューブの外に出られません。
 臭素イオン、リチウムイオンそして水はチューブの内と外を自由に行き来できます。
 チューブの内と外では濃度差がありますので、臭素イオンとリチウムイオンは外に出ていき、水が中に入ってきます。
 使用したセルロースチューブの分画分子量は12,000~14,000となっています。
 絹フィブロイン分子の分子量は約30万ですが、溶解の際の分解で生じた絹フィブロイン由来の低分子のペプチドやアミノ酸はチューブの外に溶出するものと推定されます。

2007年12月25日火曜日

絹を溶かしてフィルムをつくる方法 その5

 セルロースチューブを使った拡散透析により、溶解液中の臭化リチウムを除き、絹フィブロイン水溶液をつくります。

①絹フィブロイン溶解液



②セルロースチューブ



③セルロースチューブを適当な長さに切ります。
④切ったセルロースチューブを蒸留水中に30分ほど浸します。
⑤セルロースチューブの一端を縛るか、クローサで止めます。
⑥反対の口から絹フィブロイン溶解液を入れ、空気を抜き口を縛るか、クローサーで止めます。入れる量はセルロースチューブ容積の1/2から2/3程度です。
⑦水または蒸留水を満たした容器に溶解液を詰めたセルロースチューブを沈めます。
⑧セルロースチューブから臭化リチウム(臭素イオンとリチウムイオン)が溶出し、拡散透析が始まります。
⑨容器の水はオーバーフローさせ、セルロースチューブの内と外で濃度差があるようにします。
⑩臭化リチウムは溶出し、水はセルロースチューブ中に進入します。入れた溶解液の量が多すぎる場合など、まれにセルロースチューブが破裂する場合があります。溶解が不十分だった場合には、透析途中でゲル化する場合もあります。



⑪透析がだいぶすすんだ状態



⑫透析終了後、セルロースチューブから取り出した絹フィブロイン水溶液。
 透析終了の目安は、容器中の水に硝酸銀溶液を滴下してもほとんど白濁しない状態です。

2007年12月24日月曜日

絹を溶かしてフィルムをつくる方法  その4


臭化リチウム水溶液100mlで絹繊維20gを溶かします。





2007年12月23日日曜日

繭から生糸(きいと)へ


①繭を煮て繭糸を引き出しやすくします。
②繭糸を何本か集め一本の糸(生糸)にして巻き取ります。
 

絹を溶かしてフィルムをつくる方法  その3

 臭化リチウム水溶液で絹繊維を溶かします。

①絹繊維15~20gを容器にとり、9モル/リッター臭化リチウム水溶液100mlを加えます。
②絹繊維が液をほとんど吸ってしまいますが、ガラス棒などで繊維を押さえたり、ひっくり返したりして、液をまんべんなく繊維に含ませます。
③絹繊維が徐々に溶けてきます。気温が低く溶けにくい場合には、湯煎して30℃程度に温めます。
④絹繊維が完全に溶け、絹フィブロイン溶解液が得られます。

 絹フィブロイン溶解液には臭化リチウムが大量に含まれているので、透析等の方法で除く必要があります。   その4へつづく。

2007年12月21日金曜日

繭糸の断面















 2本の絹繊維(フィブロイン)の周りをセリシンというタンパク質が覆っています。
 繭の表面を見ると繭糸は網目をつくっていて、交差しているところはセリシンで接着されています。

絹を溶かしてフィルムをつくる方法 その2

 絹の分解を少なくして溶かすには、塩化カルシウムや臭化リチウムなどの中性塩の水溶液が適しています。
 ただし、水溶液の濃度はかなり高濃度です。

 臭化リチウム水溶液の場合

2007年12月20日木曜日

繭(まゆ)

 繭は一本の繭糸からできています。
 長さは1000m以上。

絹を溶かしてフィルムをつくる方法 その1

絹はいろいろな試薬に溶けます。
例えば、硫酸、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム溶液など。
しかし、フィルムをつくるためには、絹を分解せずに溶解することが必要です。

絹と蚕

絹は蚕がつくった絹フィブロインというタンパク質です。