2008年9月30日火曜日

銅エチレンジアミンにより調製した家蚕フィブロイン膜

   生繭の繭層を常法により精練して得た繭層フィブロイン7gを銅エチレンジアミン溶液(水酸化第2銅,6g:エチレンジアミン,8g)100mlに常温(25℃)で3分溶解し、速やかに銅イオン解離剤として1.17N酒石酸ないし1.30Nクエン酸溶液を加えて、pHを6.8~7.2に調整した。この溶液をセルロースチューブに入れて水道水で5日間流水透析し、再び、酒石酸ないしクエン酸を少量加えて水道水で1日間、純水で2日間透析を行った。得られた再生フィブロイン溶液をアクリル板に展開して、約24時間で扇風機乾燥して目的のフィブロイン膜を得た。調製保存後の膜厚は0.080mm前後であった。
 膜は、まず常温(25℃)で50%エタノールにより構造をβ化し不溶化した。さらに、膜に残存する銅およびその他のイオンを抜くため電解透析を行った。

     (福島蚕試)瓜田章二、(福島県農業経営指導課)柏倉一司

                     製糸絹研究会誌 第4巻 (1995)

2008年9月29日月曜日

PVA-絹フィブロイン複合膜の引っ張り強度特性

 絹フィブロインの混合割合を0から50%まで増やしていったときのPVA-絹フィブロイン複合膜の強度と伸度の変化を図3と図4にそれぞれ示しました。
 複合膜の強度は絹フィブロインの混合割合が0から20%までは低下し、30から50%では幾分回復しました。伸度は混合割合40%までは低下し、その後横ばいとなりました。


2008年9月28日日曜日

PVA-絹フィブロイン複合膜の調製

 2%絹フィブロイン水溶液と2%ポリビニールアルコール(PVA,重合度約2000)水溶液を混合し、この混合液を底面にテフロンシートを貼った10cm×10cm×高さ3cmのアクリル容器に流し込み、乾燥温度50~70℃で乾燥し、製膜しました。

2008年9月24日水曜日

臭化リチウム水溶液に対する絹繊維の溶解性

 臭化リチウム水溶液濃度と溶解温度を変えたときの、絹繊維の溶解量の変化を図に示しました。

 溶解温度40℃の絹繊維の溶解量は、濃度5M(mol/L)ではほとんど溶解していません。6M、7Mと濃度が高くなるにつれ幾分溶解量が増加し、7Mから8Mにかけて急激に増加しています。同じことは、溶解温度60℃でも認められます。しかし、20℃では認められません。

 臭化リチウム水溶液で絹繊維を溶解するには、濃度8M以上、温度40℃以上が効果的です。


2008年9月23日火曜日

臭化リチウム水溶液対する絹繊維の溶解性試験方法

 5M(mol/L)、6M、7M、8M、9M、10Mの各濃度の臭化リチウム水溶液に予想される溶解量を上回る量の絹繊維を浸漬し、20℃、40℃、60℃の各温度で絹繊維を溶解した。溶解時間は1時間とした。その後、溶解液を水で希釈し、ガラスフィルター(G-2)で吸引濾過し、溶解しなかった絹繊維を分離した。溶解しなかった絹繊維の重量を測定し、この値をもとに各条件における絹繊維の溶解量を求めた。

2008年9月22日月曜日

絹繊維及び他繊維の溶解性試験結果

 絹繊維を溶解できる4種類の溶液に対する、絹以外の繊維の溶解性を表にまとめました。

 どの溶液にも絹以外の繊維が1種類以上溶解します。りん酸にはレーヨン、アセテート、ビニロン、ナイロンが溶解。ニッケル・エチレンジアミン溶液には羊毛が溶解。銅・エチレンジアミン溶液には綿、レーヨン、アセテートが溶解。臭化リチウム溶液にはレーヨン、アセテートが溶解。

 従って、各種繊維の混じった状態の試料から絹繊維だけを溶解して分離することはできません。しかし、絹と他繊維が溶解している混合液を透析すると、他繊維は溶解剤が透析により除かれたことで沈殿物として析出しますが、絹は絹フィブロイン分子として分散しており溶解状態を保ちます。

 溶解と透析を組み合わせることで、絹繊維とと他繊維の分離は可能です。


2008年9月21日日曜日

絹繊維及び他繊維の溶解性試験方法

 りん酸、ニッケル・エチレンジアミン、銅・エチレンジアミン、臭化リチウム水溶液に対する各種繊維の溶解性を調べました。
 ニッケル・エチレンジアミン、銅・エチレンジアミン、臭化リチウム水溶液に関しては次のように調製しました。

 ニッケル・エチレンジアミン
  水酸化ニッケル    4g
  エチレンジアミン  20ml
  水           50ml

銅・エチレンジアミン
  水酸化銅       4g
  エチレンジアミン  20ml
  水           50ml

 臭化リチウム水溶液
  臭化リチウム    6g
  水           4ml

2008年9月18日木曜日

納豆菌から分離したバチルスを用いた「食用抗カビ性シルクフィルム」の生成

 3年連続3回目の最優秀賞。一昨年は、納豆菌から分離したバクテリアが抗カビ性物質を作り出しているのを突き止め、昨年は、蚕が作る繭を薄い膜状に加工した「シルクフィルム」の生成に成功。そして今回は、抗カビ性物質とシルクフィルムを合わせた「抗カビ性フィルム」作りに取り組み、黒カビに抵抗力のあるフィルムを完成させた。顧問の二宮純子教諭は「先輩の研究を引き継ぎ、試行錯誤を重ねた結果です」と生徒たちの頑張りを評価した。 最も苦労したのは、開発したフィルムの耐水、耐熱性を高める作業。文献を参考に、まずはアルコールを使用する方法で試した。フィルムをアルコールに直接浸したが、変形してしまった。次に、別のアルコールを用いたが、フィルム自体が溶けて失敗。そこで、「アルコール量を抑えれば形が保たれるのではないか」と仮説を立て、フィルムの原料となる溶液に、微量のアルコールを加える実験に切り替えて成功した。 2年で部長の藤木春美さんは「輸入される一部の果物の表面には、防カビ用として人体への有害性が指摘される化学物質が塗布されている。このフィルムはすべて天然素材でできており、防カビ剤の代用品として利用すれば食品の安全管理が高まるはず」としている。 (九州国際大学附属高校女子部・環境化学部)


YOMIURI ONLINEより

2008年9月17日水曜日

日本の製糸工場

器械製糸の2工場
 碓井製糸農業協同組合(群馬県)
 松岡株式会社(山形県)

座繰製糸の1工場
 宮坂製糸所(長野県)
 

2008年9月16日火曜日

日本の生糸生産(平成18年)

 生糸生産数量     2,000俵 (1俵=60kg)

 輸入生糸数量    20,000俵
 輸入絹糸数量    32,000俵

2008年9月15日月曜日

日本の養蚕(平成19年度)

 養蚕農家数    1,169戸
  収繭量        433t

   (農林水産省特産振興課調べ)

2008年9月14日日曜日

蚕の卵

 蚕種(蚕の卵)製造に関しては「高原社」さんのHPをご覧ください。

水溶性シルクタンパク質の消化・吸収性

 酵素による人工消化試験   消化率 約58%
 ラットによる消化試験       消化率 約66% 

 水溶性シルクタンパク質(水溶性絹フィブロイン)
  セリシンを除去した絹繊維(絹フィブロイン)を溶解、脱塩、凍結乾燥、粉末化したもの。

 「食品資源としてのシルクを見直す」 東京農業大学 WEBジャーナルより引用     

2008年9月13日土曜日

硬タンパク質膜の反応性と透過性

 セル1に加えられた基質パラ-ニトロフェニル・りん酸二ナトリウム(PNPP)は膜中に浸透、透過する間に膜中のアルカリホスファターゼによりパラ-ニトロフェノール(PNP)とりん酸に加水分解され、PNPとりん酸は膜の両側に拡散した。一方、未反応のPNPPは膜を通って、セル2へ拡散した。

2008年9月11日木曜日

硬タンパク質膜の反応性と透過性の測定

 測定装置を図2に示します。膜で区切られた片側の容量は150ml、膜の有効面積は7.07平方センチメートルです。

 セル1に0.01Mのパラーニトロフェニル・リン酸二ナトリウム(PNPP)を加え、測定温度30℃で、一定時間ごとにセル1側のパラーニトロフェノール(PNP)、セル2側のPNP及びPNPPの濃度を測定しました。



2008年9月8日月曜日

硬タンパク質膜の膜電位

 フィブロイン、ケラチン、コラーゲンの膜電位と塩化カリウム濃度(高濃度側の濃度C1の対数で表す)の関係を図4に示しました。
 膜電位はフィブロインが一番高く、次にケラチン、コラーゲンの順でした。これは膜の緻密さと関連づけられ、フィブロイン膜が一番緻密であることを示していると考えられます。

2008年9月7日日曜日

硬タンパク質膜の膜電位測定

 膜電位の測定に用いた装置を図1に示します。測定セルの片側の容量は35mlで膜面直径は3cmです。測定セルと電極の挿入されている容器は、塩化カリウムを含んだ寒天ゲルのつまったポリエチレン細管で接続しました。

 測定は膜の両側の塩化カリウム濃度比を2対1とし、低い濃度より順次高い濃度の膜電位をエレクトロメーターで測定しました。

 測定に用いた膜は測定前に400Vで流れる電流が0.2mAになるまで電気透析を行いました。

2008年9月6日土曜日

硬タンパク質膜のひとつコラーゲン膜の作り方

 精製されたコラーゲン繊維(約3mm角の皮片)10gを1.5N水酸化ナトリウムと0.2Mモノメチルアミンを含む水溶液250ml中に浸せきし、4℃で48時間保存した。その後、溶液を傾斜によって取り除き、皮片を5%塩化ナトリウム溶液で3回、0.02M酢酸溶液で5回洗浄し、一晩0.02M酢酸溶液に浸せきした。次に、この酢酸溶液を取り除いた後、0.4M酢酸溶液を加え、20分間ホモジナイザーにかけ皮片を粉砕し、これを4℃で保存した。1日及び2日後、20分間同様にホモジナイザーにかけてコラーゲンをほとんど溶解した。この溶液を0.4M酢酸溶液で3倍に希釈し、pH4になるまで透析した。遠心分離後、上澄みを水平なアクリル樹脂板上で風乾した。

2008年9月5日金曜日

硬タンパク質膜のひとつフィブロイン膜の作り方

 繭12gを三層にはく離後、1リットルの0.5%マルセル石けんの沸騰中で30分間処理するする操作を2回行い、セリシンを除去し、次に50℃の0.5%、0.3%、0.2%の炭酸ナトリウム溶液1リットルで順に処理して、石けん分を除き精製フィブロインを得た。
 精製フィブロイン約9gを9.3M臭化リチウム300mLに40℃で完全に溶解した。これをセルロースチューブに入れイオン交換水を用いて室温で48時間透析した。透析後、溶液を5000r.p.mで10分間遠心して沈殿物を除いた。上澄みと酵素のアルカリホスファターゼ(SIGMA社製、1.2U/mg、pH10.4、37℃)を混合して水平なアクリル樹脂板上に流し、扇風機を用いて室温で72時間風乾し、半透明な酵素を包括固定した膜を得た。この膜を50%エチルアルコールに室温で30分間浸せきして不溶化処理を行い、水洗後乾燥した。
 また、不溶化処理をした酵素包括固定膜をpH8.0(0.05MKH2PO4-NaOH緩衝溶液)の1%グルタルアルデヒド溶液に室温で30分間浸せき後、水洗乾燥して、酵素を膜に架橋結合させた膜を得た。

2008年9月3日水曜日

硬タンパク質膜のひとつケラチン膜の作り方

 精製したした羽毛(ケラチン)10gを調製後3日を経過した0.2Mチオグリコール酸ナトリウム溶液(チオグリコール酸に水酸化ナトリウム溶液を加えてpH11.0に調製したもの)を加えて、50℃で4時間振とうしてケラチンを溶解した。この溶液を5000r.p.mで10分間遠心して不溶物を取り除いた後、セルロースチューブに移し、室温で24時間イオン交換水で透析した。透析後、同じ条件で遠心し、上澄みをアクリル樹脂板上に流し、風乾した。ケラチン膜の結晶化が進みすぎないうちにアクリル板よりはがし、水中に保存した。
 上澄みに2%グリセリンを混合して製膜した場合には、風乾後そのまま保存した。
 ケラチン膜をメチルエステル化、ヒドラジン誘導体、アジド誘導体と化学修飾し、最後にアルカリホスファターゼと反応させ、アルカリホスファターゼを共有結合で固定したケラチン膜を得た。

2008年9月2日火曜日

シルクフィルムのはじまり その2

 杉浦正昭氏のシルクフィルムに関連した足跡

①β-ガラクトシダーゼ-フィブロイン膜の反応性と透過性
    東工試報 73-11(1978)

②β-グルコシダーゼ-セリシン膜の性質
    東工試報 74-5(1979)

③フィブロイン膜に包括固定されたβ-グルコシダーゼ
    化技研報 76-10(1981)

④アルカリホスファターゼを固定化した硬タンパク質膜の反応性と透過性
    化技研報,81,(7),375-380(1986)


  東京工業試験所(東工試) →  化学技術研究所(化技研)