長野県下の各地で織り継がれている素朴な味わいを持つ信州紬の特徴の一つに、植物染料を利用する草木染があります。
信州は山国であり、その山野に自生、あるいは栽培されている多種多様の植物が、染材として利用されています。
草木染に利用される染材の種類は極めて多いため、そこから得られる色相はバラエティーに富んでいます。このことは、他産地にない信州紬の草木染の大きな特徴といえます。
最近では県内の染材にとどまらず、県外、さらには輸入植物染料の一部も利用されてきており、草木染色の内容を、より一層豊富にしています。
草木染は、植物染材の利用部位によって、発色および濃度が異なるもので、また当然のことながら、媒染剤の種類によっても色相が変化し、染色堅牢度も異なります。さらには染色回数を繰り返す、いわゆる重ね染めによって、染色濃度を上げることができます。
化学染料と異なり、色素の抽出から染色・媒染と、充分な時間と手間をかけなければ、決して冴えた、しかも渋味のある色相を得ることはできません。
現在(1978年)、信州紬の草木染に多用されている媒染剤の種類を挙げてみると、次のようになります。
アルミナ系:明ばん、酢酸アルミニウム
銅系:酢酸銅、硫酸銅
錫系:第一塩化錫、第二塩化錫
カルシウム系:水酸化カルシウム。酢酸カルシウム
クロム系:クロム明ばん、酢酸第二クロム
鉄系:木酢酸鉄、硫酸第一鉄
従来、酸化媒染剤として利用されてきた重クロム酸カリは、六価クロム化合物で有害物質のため、公害防止の見地から現在はほとんど用いられていません。
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