2009年1月31日土曜日

紫根による絹の染色Ⅱ

(1) 紫根抽出
   メタノール500mlに3%酢酸13.3mlを加え抽出液とします。
   この抽出液に紫根100gを浸漬して色素を抽出します。

(2) 染色液
   紫根色素を抽出した液(紫根抽出液)300mlに水を加え6倍に希釈します。
   希釈した紫根抽出液1800mlに10%酢酸3.6mlを加え染色液とします。

(3) 染色
  染色(常温、30分)
   常温の染色液中に絹糸を30分間浸漬します。

  媒染(常温、30分)
   染色液から糸を取り出し軽く絞って脱液します。
   この糸を常温の媒染液中に30分間浸漬します。

  水洗

  乾燥

2009年1月27日火曜日

紫根による絹の染色Ⅰ その3

後媒染

染色(常温 30分)

媒染(常温 30分)

水洗

乾燥

2009年1月26日月曜日

紫根による絹の染色Ⅰ その2

先媒染

媒染(常温から45℃ 30分)

乾燥

染色(常温 30分)

水洗

媒染(常温 5分)

水洗

乾燥

2009年1月25日日曜日

紫根による絹の染色Ⅰ その1

紫根抽出液
 紫根80gをメタノール400ml中に浸漬して抽出。

染色液
 紫根抽出液200mlに水を加え1200mlに希釈。

媒染剤
(1) アルミン酸ナトリウム
   アルミン酸ナトリウム0.1gを水100mlに溶解、煮沸。
(2) 鳥梅酢
   鳥梅1粒を水100mlに浸漬、一夜放置後、ろ過して使用。
(3) 灰汁
   灰5gを水100mlに溶解、煮沸後、ろ過して使用。

2009年1月18日日曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その7

中性塩(塩化カリウムと塩化カルシウム)の影響
 色素の溶出に関して塩化カリウム水溶液は塩化ナトリウム水溶液の場合と同様の傾向を示し、ナトリウムイオンとカリウムイオンという違いは認められませんでした。
 塩化カルシウム水溶液の色素溶出試験の結果を図に示しました。
 塩化カルシウムの場合には塩化ナトリウムや塩化カリウムよりも低濃度で色素の溶出を抑制する効果のあることがわかりました。



2009年1月17日土曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その6

中性塩(塩化ナトリウム)の影響
 オレンジⅡを含有する絹フィブロインフィルムを蒸留水及び塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した時の、フィルムから溶出した色素(オレンジⅡ)の水溶液中濃度の変化を図に示しました。
 塩化ナトリウム濃度が高くなるほど溶出する色素濃度は低くなる傾向が認められました。ナトリウムイオンと塩素イオンの存在により色素の溶出が抑制されたと推定されます。


2009年1月12日月曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その5

pH依存性
 オレンジⅡを含有した絹フィブロインフィルムをpHの異なる水溶液中に一定時間浸漬し、溶出する色素濃度を調べ、その結果を図に示しました。
 オレンジⅡの溶出はアルカリ性側で高く、酸性側で低いことがわかりました。
 また、ローズベンガル及びクリスタルバイオレットを含有する絹フィブロインフィルムについても同様の試験を行いました。
 ローズベンガルの場合には、オレンジⅡの場合と同じくアルカリ性側で高い溶出を示しました。
 蒸留水に浸漬した場合では色素の溶出の見られなかったクリスタルバイオレットですが、緩衝溶液中に浸漬した場合には溶出が認められ、オレンジⅡやローズベンガルの場合とは逆に酸性側で高い溶出が見られました。


2009年1月10日土曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その4

色素の溶出
 色素含有絹フィブロインフィルムを25℃蒸留水中に浸漬し、その際フィルムから溶出した色素濃度の経時変化を図に示しました。
 オレンジⅡは60分後の溶液中濃度が7.22μg/mlとなり、その後幾分増加するものの濃度増加は横ばいとなりました。フィルムからのオレンジⅡの溶出が平衡に達したものと推定されます。
 メチルオレンジに関しても同様のことがいえます。
 酸性フクシンに関しては溶出が平衡に達するとともに、色素の分解も並行して進行しているため、色素の濃度の減少が見られたと推定されます。
 コンゴーレット、ローズベンガルに関しては溶出量が少ないものの、120分まで溶出濃度の増加が認められ、平衡には達しませんでした。
 クリスタルバイオレットの関しては溶出が認められませんでした。
 色素の溶出速度の違いに関しては、色素分子量の大きさが関係していると推定されますが、それだけではないようです。ちなみに、メチルオレンジとオレンジⅡの分子量は350前後、コンゴーレットとローズベンガルの分子量が700から1000。そして、溶出の認められなかったクリスタルバイオレットの分子量は約400でした。
 また、フィルムを浸漬する水溶液の温度が高いほど、色素は溶出しやすいことがわかりましたが、クリスタルバイオレットは水溶液温度40℃においても溶出が認められませんでした。

2009年1月6日火曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その3

 色素の溶出量測定
 水溶液100ml中に2cm×2cm角の色素を含有した絹フィブロインフィルム2枚(約0.05g)を浸漬し、時々撹拌しながら、30分ごとに水溶液を採取し、水溶液中の色素濃度を測定しました。
 色素濃度は分光光度計を使い各色素の最大吸収波長で採取した水溶液の吸光度を測定し、既に求めてある検量線より濃度を算出しました。
 pH1~5の水溶液は酢酸ナトリウム-塩酸緩衝液、pH6~8はりん酸緩衝液、pH9~11は炭酸塩-炭酸水素塩緩衝液を使用しました。
 中性塩は塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムを使用し、濃度は0.5%、1.0%、2.0%でした。
 各色素の最大吸収波長は、メチルオレンジ 470nm、オレンジⅡ 490nm、酸性フクシン 540nm、コンゴーレッド 500nm、ローズベンガル 550nm、クリスタルバイオレット 590nmでした。


2009年1月5日月曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その2

色素含有フィルムの作製
 6%絹フィブロイン水溶液50mlに1%色素水溶液5mlとベタイン1gを加えて混合後、混合液をアクリル板上に30cm×30cmの正方形になるように展開し、風乾することでフィルムを作製しました。
 メチルオレンジとクリスタルバイオレットは溶解性の関係で、0.1%水溶液を使用しました。

2009年1月4日日曜日

絹フィブロインフィルムの徐放性  その1

 色素を含有させた絹フィブロインフィルムをpH、温度などの条件の異なる水溶液中に浸漬し、時間経過とともに増加する水溶液中の色素濃度から溶出量を測定し、絹フィブロインフィルムの除放性に関する基本的な知見を得ました。
 色素は次の6種類です。
 メチルオレンジ、オレンジⅡ、酸性フクシン、コンゴーレッド、ローズベンガル、クリスタルバイオレット

2009年1月3日土曜日

天蚕のこと  その5

実用飼育上の問題点
 野生の動物には、みな多かれ少なかれ天敵があり、その被害によって、大きく増えつづけるのをくいとめられています。そして、その結果が、自然界にすんでいる動物相互のバランスとなっているといわれています。野生動物の仲間である天蚕も例外ではありません。天蚕の天敵は、病気、小動物、小鳥等さまざまです。これらの防除の点も、全然手がつけられていない問題ではなく、じっくり時間をかければ改善の見通しはあるでしょう。
 防鳥網等むかしにはなかった良質の農業資材もあり、家蚕の飼育法に準じた屋内飼育法も考案されてきました。
また、穂高町有明地方の現地では、古くから伝わる飼育技術に精通した人びとが存命しており、これらの技術保持者の健在な間にその技術を習得することも必要です。
 
 衣、食、住は人類の物質的生活の基調をなす三大要素であるといわれます。中でも、衣服をまとうということ、つまり服装は人間のみに与えられた美的本能であり、特権であるといわれています。このような見方からすると、繊維の女王、繊維のダイヤを創生するヤマコを発見し、その飼育に着眼した有明地方の先人の英知と努力に、感謝と賞賛の言葉をおくりたいです。
(長野県有明天柞蚕試験地研究員 中嶋福雄)

2009年1月2日金曜日

天蚕のこと  その4

地場産業育成の気運あがる
 これらの施策により、復興の気運がみられはじめました。
 しかし、昭和期に入り、たび重なる戦争のため農家の労力が食糧増産等に向けられると、再び衰退の途をたどることになりました。かろうじてこの地方の一部の篤志家須沢勇治(1879~1960)、吉田憲次(1888~1945)等により飼育保存された天蚕卵、柞蚕卵を、第二次世界大戦終結後、長野県蚕業試験場松本支場有明天柞蚕試験地で引き継ぎ飼育保存して、その命脈を維持してきました。 このところ、織物業界の強い要請、地場産業の育成等の社会情勢の中で、長野県は蚕糸業審議会の議決を経て、天蚕の試験研究と飼育増殖とをとりあげ、現在、長野県下の農家に飼育普及されつつあり、今後、関係機関等の努力によりさらに増加の傾向にあります。