2009年1月3日土曜日

天蚕のこと  その5

実用飼育上の問題点
 野生の動物には、みな多かれ少なかれ天敵があり、その被害によって、大きく増えつづけるのをくいとめられています。そして、その結果が、自然界にすんでいる動物相互のバランスとなっているといわれています。野生動物の仲間である天蚕も例外ではありません。天蚕の天敵は、病気、小動物、小鳥等さまざまです。これらの防除の点も、全然手がつけられていない問題ではなく、じっくり時間をかければ改善の見通しはあるでしょう。
 防鳥網等むかしにはなかった良質の農業資材もあり、家蚕の飼育法に準じた屋内飼育法も考案されてきました。
また、穂高町有明地方の現地では、古くから伝わる飼育技術に精通した人びとが存命しており、これらの技術保持者の健在な間にその技術を習得することも必要です。
 
 衣、食、住は人類の物質的生活の基調をなす三大要素であるといわれます。中でも、衣服をまとうということ、つまり服装は人間のみに与えられた美的本能であり、特権であるといわれています。このような見方からすると、繊維の女王、繊維のダイヤを創生するヤマコを発見し、その飼育に着眼した有明地方の先人の英知と努力に、感謝と賞賛の言葉をおくりたいです。
(長野県有明天柞蚕試験地研究員 中嶋福雄)

0 件のコメント: