2008年12月27日土曜日

絹フィブロイン水溶液をゲル状態(シルクゼリー)に変化させる

 絹フィブロイン水溶液と有機溶剤を混合した場合のゲル化を試験しました。

 1%絹フィブロイン水溶液に同体積の有機溶剤等を加え、混合後、そのときの水溶液の変化を観察しました。

試験結果
(1) 1時間以内に絹フィブロイン水溶液をゲル化させた薬品
メタノール、エタノール、アセトン
(2) 数時間程度でゲル化させた薬品
2-プロパノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピリジン
(3) ゲル化させた薬品
N-メチル-2-ピロリドン、トリエタノールアミン、酢酸エチル
(4) 凝固させた薬品
イソブチルアルコール、アセチルアセトン、ケイ酸ナトリウム、n-アミルアルコール
(5) ゲル化できなかった薬品
エチルエーテル、アンモニア水、乳酸、キシレン、トルエン、四塩化炭素

 液状絹フィブロインの結晶化については、メタノールのような極性を持ち水と良く水和する溶剤で処理すると、メタノールの脱水作用により絹フィブロイン分子鎖と結合していた水和水が分子鎖から離れ、局部的に絹フィブロイン分子鎖が形態変化を起こし、β型に結晶化するといわれています1)。これに対して極性が小さく、疎水性の強い溶剤では結晶化しないとされています1)。この試験においても同様の傾向が認められました。
 絹フィブロインの円偏光二色性を測定した結果より、絹フィブロイン分子は水溶液中では不規則コイル型の構造をとっているが、容積の30%以上のジオキサンまたはエタノールを絹フィブロイン水溶液に加えるとフィブロイン分子はβ型構造をとるとされています2)
 絹フィブロイン水溶液の水溶液からゲル状態への変化も絹フィブロイン分子の不規則コイル型からβ型への構造変化と推定されます。

参考文献
1)馬越 淳:絹の結晶化と液晶,高分子,34,98(1985)
2)飯塚英策:絹蛋白質の溶液内構造(続絹糸の構造,北条舒正編),P293~311,信大繊維学部(1980)

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