2008年12月29日月曜日

天蚕のこと  その2

天蚕は農民の英知の産物
 穂高町(現在は安曇野市)有明地方は、有明神社伝によれば、祭神、手力男命が、天岩戸を引き放ち給うたので六合皆明となったに因み、この名称があるとされています・・・・。
 村は国鉄(現JR東日本)大糸線、有明、安曇追分両駅の西方に位置し、最西端に村を象徴する有明山(2268m)がそびえています。その雄姿は遠く松本平からも眺望され、信州富士、有明富士等の別名をもつ名山で、山麓には名湯中房温泉があり、燕岳、大天井岳等アルプス銀座の登山道も開けています。
 古歌に、
  片しきの衣手さむくしぐれつつ
     有明山にかかるしらくも
         後鳥羽院

 てりかはる紅葉をみねの光にて
      まつ月おそき有明の山
            藤原定家

等、有明山を詠んだ歌も多くみられます。
 この山麓一帯が、古くから“ヤママイの里”として名高い有明で、水上勉の小説『有明物語』、『西陣の女』等の舞台でもあります。
 広く開けた土地は、クヌギ林が美しく茂る高燥な土地で、その土地条件を生かしたヤママイ飼育は、農民の英知の産物であるといえます。
 天蚕糸は、優雅な光沢、軽くて柔らかく、あたたかく、丈夫でしわにならない。また、染料で染まり難いため、天然絹糸そのものの美しさが、他の繊維にはみられない特長だといわれ、織物業界からは繊維の女王、繊維のダイヤ等と珍重されています。

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