2008年12月22日月曜日

信州紬の染色 その3

精練方法
 草木染をはじめとする染色には、その前工程の糸精練が大きな影響をおよぼしますが、県下の精練は、一般に化学精練、特に石けんソーダ練りが広く応用されています。その外、酵素練りなどが一部に利用されています。
 しかし、最近にいたり、灰汁練りを採用する業者が次第に増えてきています。化学精練剤のなかった往時は、すべてこの灰汁練りにより生糸は練られていましたが、今この方法がみなおされてきたのは、現在の化学精練法では絶対に得ることのできない、腰とボリューム感のある練り糸が得られるためです。
 これは灰汁中の成分が精練時、絹糸に吸着されるためで、またこの吸着成分が草木染の染色に際して染料の吸着・発色を良好にし、いわゆる媒染剤的な効果を備えるため、特に草木染に適しています。
 参考までに灰汁の調製法と練り方についての概要を述べます。
(1) 灰汁の調製
 わら束2.5kgを焼き、この灰を水26リットル中に投入して、三日間静置後、灰と灰汁を濾し分け25リットルの灰汁を得ます。この灰汁のpHは9.8で、これを本練りに使用します。
(2) 練り方
 灰汁の一部を水で希釈し、pHを8.5位にし、これに糸を一夜浸漬してセリシンの膨潤をはかり、軽く絞って別の灰汁を用いて、95℃位の温度で100~120分ほど練り、温水洗して、できれば天日で乾燥します。灰汁中に含有されているカリ(K2O3)、ソーダ(Na2CO3)が主に精練作用を行い、その外の成分である珪酸、石灰などが糸に吸着されるため、灰汁練り独特の風合いが得られるものと推定されます。

信州紬の染色は多種多様な植物染料と、これに適した精練、さらに堅牢で渋味のある化学染料が効果的に取り入れられているのが、その特徴といえます。
信州紬の声価をますます高めるため、できるだけ県産の植物染材を活用し、かつ堅牢な染色法を研究して、これを信州紬の主調色としていくことが、今後の課題と考えられます。
(長野県繊維工業試験場化学部長 窪田作水)

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